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Movies【扉をたたく人】 [Movies]

私は日本人で、
日本から出たことがなくて、
勿論異国に移り住んだこともなくて、
きっと一生、ここから出ることもなくて、
文化とか慣習とか歴史とか人種差別とか、
全部教科書の中のことで。

勉強したことすら、もう覚えていなくて。

だから、この映画の、
呆気ないほどのラストシーンが胸を突いた。

何かが違うとわかっていながら、
明らかに間違ってるとわかっていながら、
「そうするしかない」現状。
9.11以降、移民という名の扉をたたく人たちに、
耳を塞いで声も聴かずに背を向ける現実。
初めから何も無かったことにしたがる、実情。

何故だろう。
本当は、分かり合えるはずなのに、
ひとりひとりがちゃんと向き合えば、
きっともっと素晴らしいはずなのに。

ただ、所詮これもきれいごとで、
蚊帳の外だから言えることで。

唯一の希望の光といえば、
無気力で世の中のことなんてどうでもよかった
への字口のウォルターが、
異文化に触れ、異国の青年と出会い、
言葉を交わさずともジャンベを叩くことで人の輪に飛び込み、
やがて、自分の内側を表現するように、
地下鉄の構内で一人、無心に叩き続ける熱、だろうか。

たった一人で、
誰一人、笑いかけても来ないのに、
ひたすらに叩き続けるラストシーンから、
あの公園での、心が震えるほどの素晴らしい輪を思い出したら、
じんわりと涙がにじんで来てしまった。

私たちが、訪問者をこころよく迎え入れる日は、
いつやってくるのだろう。
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