Movies【クライマーズ・ハイ】

未曾有の大惨事、日航機墜落事故。
墜落直後の第一報も、墜落現場の悲惨な光景も、
ゆっくりと吊り上げられた生存者の女の子の腕の細さも、
あの当時は酷く衝撃的に焼きついていたのに。

いつしか短絡的に人が殺され、良く判らない理由で人が殺され、
「人が死ぬ」という衝撃に麻痺しかけていた気がする。

この映画を観ていて、始終頭に浮かんでいたのは、
プライド、の4文字だった。
登場人物は総て、このプライド、誇りってヤツを、
普通の人間よりは多めに持ち合わせている。
自分の仕事に対する誇り。

目の前に広がった事故の衝撃の強さに、
伝える使命を職にしている誇りを揺さぶられ、
『伝えたい』一心で突き進む者。
その誇りがいつしか『意地』というちっぽけな石に
すりかわっていることを知らず、
自分を乗り越えていこうとする世代に
その安いプライドを叩きつける者。
そして、目の前の惨劇に耐え切れず、
誇りも精神も脆く崩れてしまった者。

今の報道は、この誇りを持って伝えているだろうか。
携帯もデジカメも通信手段も何もかも、
一粒の汗も流さずに最前線を伝えられる現代で、
命を張って現場を伝える根性が、あるのだろうか。

衝動に突き動かされながら、
摩擦を起こし衝突し信頼する仲間に支えられながら。

それにしても。
堤真一さんが孤高の記者を演じるのは、
何となく想像も出来ていたし、予想に近い熱っぽさだったけど、
堺雅人さんがああまで振り切れる役を演じてらしたとは。
冒頭のほわんとした顔つきと、
山を降りてきた直後の顔つきがまるで別人。
いかに悲惨な現場を目の当たりにしてきたのか、
あれだけで観客に伝えてくるとは。

素晴らしい。

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